ハナビ、バーサス、クランキーセレブレーション……今やどのホールに行っても見かけないことがないノーマルタイプ機種でしょう。どれも程よく技術介入要素があり、リーチ目を打ち手に楽しませる作りになっています。
どれも四号機時代から存在していた機種であり、ユニバーサル系列のアクロスというブランドから販売されたという共通点があります。
さて、このアクロスブランドが一体どのように確立されていったか、その歴史をまとめてみました。
目次
アクロスブランドの誕生 〜クランキーコレクション〜
アクロスブランドはかつての名機復活を掲げて誕生しました。
4号機Aタイプの復刻はこれ以前にも企画されていました。アレックス・ゲッターマウス・タコスロなど、五号機の規定の中で再現しようという試みは行われていたのですが、どれも大きな流行には至らず、失敗作の烙印を押されてホールから撤去される末路を辿りました。
Aタイプが流行しない背景には、「ノーマル機は時代遅れ」「一撃性・爆裂性こそがスロットの醍醐味」という時代の風潮がありました。5号機は日進月歩で進化を続け、競うように純増枚数が上がり、一撃の出玉枚数も増大していきます。プレイヤーの多くは4号機に肉薄するくらいの爆裂性を求め、ノーマル機は人気を失っていたのです。
アクロスブランドは、こうした時代の中でノーマル機が持ってしまった負のイメージ、時代遅れで古臭いイメージを一新する使命を負って誕生したのでした。
クランキーコレクションはかつての「クランキーコンドル」を復刻した台です。
技術介入難易度が程よいレベルであること、クランキーコンドルを想起させる秀逸なリーチ目、フル攻略で設定1でも機械割が100%を超えることなどが相まって、クランキーコレクションはリーチ目と技術介入を楽しむ一定層のファンを発掘することに成功します。
模索期 〜リバティベル・B-MAX〜
クランキーコレクションに引き続いて、アクロスは半年ずつの間を置いて「リバティベル」「B-MAX」をリリースします。
リバティベルはART機でしたが、液晶のないシンプルなゲーム性とART機の相性は悪く、液晶付きで派手な演出で期待感を煽るART機と比べるとどうしてもゲーム性で見劣りします。プレイヤー目線でいえば、どうせ似たようなゲーム性なら派手な演出や音を楽しめる台を打とうと思うわけです。新しいファンを開拓することはできませんでした。
このためか、B-MAXでは再び原点回帰的な技術介入・リーチ目路線へと復帰します。
B-MAXは4号機時代から高い知名度を持つ機種であり、クランキーコレクションと同じように古き良きノーマルマシンを
しかしこの台は目押し難易度が高すぎるという欠点がありました。状況に応じて臨機応変に枚数調整を行わなければならないビッグボーナス、高頻度でビタ押しが要求されるレギュラーボーナスなど、技術・知識ともに他の機種と比べた要求水準が高かったのです。ライトユーザーへの敷居があまりにも高すぎました。一部のコアなファン層からこそ支持されたものの、広く受け入れられるものではありませんでした。せいぜいバラエティに一台が限度、流行を生み出すには至りませんでした。
このように、いろいろな方向性を模索するものの、アクロスブランドは今一つその地位を確立できませんでした。2013~2014年はART機・AT機全盛期ともいえる時代で、そこにAタイプの割り込む余地がなかったのです。
変わり種「沖ドキ!」の大ヒット
B-MAXから半年の時を経てリリースされたのが「沖ドキ!」です。
「32ゲーム以内での擬似ボーナスの連チャン」をテーマとしたAT機であり、「告知ランプの点灯」「遅れ」以外は一切演出を廃したシンプルな台です。
これが空前絶後の大ヒットとなります。
アクロスのノーマルタイプが4号機の技術介入やリーチ目を忠実に再現したのだとすれば、沖ドキは4号機の裏モノのシンプルさと爆裂性を忠実に再現した台でした。天国モードに上がるまではハマるほど天国モードへの期待感が上がる「島唄」を彷彿とさせるゲーム性、フリーズによって獏連するという「いみそ~れ」のような演出など、随所にそうした意識が見られるわけです。
リバティベルの失敗の原因は、ゲーム性にまとまりが無かった点です。「32ゲーム以内の連チャン」と「ハイビスカス点灯の気持ち良さ」に極端に特化させた沖ドキは、4号機的なシンプルなギャンブル性を求める層に見事にフィットしたのでした。
コイン持ちの悪さも特徴的です。投資速度が上がるという負の側面もありますが、吸い込みの激しい分を初当たりの軽さや爆裂性に還元しているわけで、プレイヤーには「ハイビスカスがよく光る」というポジティブな印象を与えられるのです。
HANABIのヒットとアクロスブランドの確立
沖ドキこそヒットしたものの、沖ドキのジャンルは爆裂AT機。リーチ目と技術介入で魅せるアクロスの王道からは逸れた台でした。
沖ドキがリリースされた3か月後、B-MAXぶりにアクロスの王道ともいえるノーマルタイプの台がリリースされます。
HANABIはじわじわとヒットし、導入から長い間支持されることになります。導入からある程度経ってからハナビを増大するホールも多く、パネルやリールの違う新型「HANABI」もリリースされました。
ハナビのヒット要因を分析するのは非常に難しいですが、一番大きい要因は時代背景でしょう。ハナビがリリースされた2015年は爆裂AT機への規制が行われた年であり、次々とリリースされる新基準機はどれもユーザーから支持されるものではありませんでした。
レア役やボーナスがすべて押し順で管理されたAT機の中では、自分で好きな場所や押し順を押してリーチ目を判別するゲーム性はかえって斬新だったのです。それに、HANABIにはビッグ終了後にRTが付いており、ここでビッグを引き戻せれば600枚強。AT機にも引けを取らない出玉になります。
その他にも、5号機のART機・AT機でドンちゃんシリーズが数多く出ていたためにハナビがユーザーに受け入れられやすかったこと、高設定の割がそこまで高くなく高設定示唆演出が出やすいため店からすると扱いやすい台であったこと、一枚役とリプレイを巧みに生かしてリーチ目を演出したことなど、ヒットの要因は数え切れません。
安定期
ハナビで「ノーマルタイプマシンにも一定の需要がある」ことが示され、アクロスブランドはこの後もこの路線を追求します。ホールもハナビのヒットを受けて積極的に台を導入するようになります。
これ以降は「技術介入込みで低設定の機械割が甘い」「リーチ目と演出をほどよく組み合わせて楽しむ」という軸を守った台が多くリリースされます。そしてこういったノーマルタイプの作風は他社にも影響を与えます。低設定の割は甘くするというのがノーマル機の暗黙の了解となりました。
ユニバーサルを代表する名機「サンダーV」は「リボルト」として復活。シンボルである「V」を前面に押し出したクールな筐体はホールで強い存在感を放ちます。目押しの煩雑さを初代からそのまま受け継いでいたため、ハナビからのアクロスファンからの好みは分かれる一台でしたが、
サンダーVといえば音楽の素晴らしさもその魅力のひとつ。古くからの曲も新規の曲も素晴らしい完成度でした。
次いでリリースされたのは、三種類の告知ランプを搭載した「ゲッターマウス」。三種類の子役に対応した告知ランプは賛否の分かれるものでしたが、リールフラッシュだけでない新しい演出の境地を開拓した点で意義深い演出だったといえるでしょう。
また、ゲッターマウスはリール制御も画期的なものでした。順押しからはノーマル機ならではの多彩なリーチ目が楽しめ、中押しをするとシンプルな一発告知的ゲーム性を楽しめるようになっています。素人から玄人まで、プレイヤーの多様なニーズに応えた一台だといえます。
「バーサス」はリーチ目パターンやRTなど、HANABIのゲーム性の大部分を踏襲しながらも不評だった点を改善した台です。アクロスノーマル機の中ではハナビに次いで(ホールによってはハナビを凌ぐほど)高稼働を保っています。
バーサスの魅力は何といっても予告音でしょう。考え抜かれたその出現度と期待度は、ハナビの遅れやゲッターマウスの小役ランプと比べても絶妙。飽きさせず、かといって鬱陶しくもなく、ノーマル機至上の演出だといえるでしょう。
クランキーコレクションをさらにリバイバルした「クランキーセレブレーション」は、設定1のフル攻略機械割がさらに甘く設定されており、甘すぎて早々に撤去してしまうホールもあるほどでした。ボーナス枚数を減らして確率を高くした挑戦的なスペックは、とにかくボーナスを引いて楽しみたいという層の需要にフィットする、痒い所に手が届くスペックだといえます。
6号機からはビッグボーナスの払い出し枚数が250枚までに減ってしまうため、クラセレタイプのマシンに期待が掛かります。
アクロス機の今後の展望
2018年には最新作の「アレックス」がリリースされました。B-MAXに近いリール配列を持ちながら、フラッシュ演出の矛盾で楽しむというハナビ・バーサス系統のゲーム性を軸にした台です。
復刻機としては文句のない仕上がりですが、既存の演出を寄せ集めた台だという印象も否めず、図らずもノーマルタイプの限界を露呈してしまっているような台です。
6号機ではノーマル機の獲得枚数規制が行われ、ビッグボーナスの払い出し枚数が最高で250枚までへと制限されました。ハナハナやジャグラーに匹敵するだけの存在感を作り上げたアクロスですが、今はまさに転換期だといえます。RTやATを活用して新しいゲーム性を目指していくのか、クランキーセレブレーションのような保守的な台を保っていくのか、これからの展開が楽しみですね。
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